続 前略 おふくろ様
◆バスツアーで河津に行ってきた友人から厚揚げを頂きました。沼津インター近くの土産物店で買ってきてくれたらしいのです。さてと、どの場面でどのように口に運ぼうかとほくほく顔で思案していると、インターホンが鳴りました。いつもお世話になっている指圧の先生の奥さんが「河津と松崎に行ってきたので御裾分け」と干物を持ってきてくれたのです。大きな金目ダイが袋からはみ出しそうに鎮座しているではありませんか。
◆前略、要するにどの酒で誰と迎え撃つかであります。「三岳」にしようか、それとも「酔仙」にしようか、いっそ、ワインかビールにしようか。一人で飲むのはちょっと寂しいから婿殿でも呼ぶか。いやいや、ちびりちびりと長期戦で行くか。と、果てしなく、ウキウキと思案していますと昨年訪ねた河津の桜が、松崎の風景が頭の中で広がって、あそこに泊って、あの港でカヌーを楽しみと、心はもう、次の旅に出ているのであります。
◆そんな夢を追いかけているところに「何をしているのよ。今日は、餃子ですからね。いつものように刻んでこねて下さいよ」と台所から職務命令が出されます。台所って言えば、いや、前略 おふくろ様が創られた昭和50年代の始め、八千草薫は愛しいほど輝いていましたね。料亭「川波」を舞台に、萩原健一をはじめ、梅宮辰夫も桃井かおりも、その他、室田日出男・川谷拓三・小松政夫・大滝秀治・風吹ジュン・志賀勝・木ノ内みどりなど、引き込まれるほど魂が入っていて魅力的でしたね。
◆倉本さんの脚本がまた、いいんです。間が絶妙で、料理で言えば、まるで調味料のようで、役者さんたちも心理描写の演技が大変だっただろうなと思われます。私も時間を見つけては、台所に立つようにしております。いつ、離婚を申し渡されても良い様に、いつ、先立たれても良い様に。そして、週一ぐらい私の料理で団欒が持てるように、努力して参りたいと思っております。いつか料亭「川波」の調理場に立てることを夢見て。
◆あっ、そうそう、入院しておりましたMさんが無事、退院いたしました。本当に良かったです。また、あのチャーミングな笑顔に出会えます。前略 おふくろ様、まだまだ寒い日が続きます。風邪など引かぬよう、お過ごし下さい。花の季節には、帰郷したいと思っております。では。
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