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菅沼キャンプと台風

 ◆奥日光湯元温泉も雪が少ない。それでも頬を打つ風は痛いほどで、耳まで覆う毛糸の帽子を深めに被って散策に出かけた。平日のスキー場に客の姿は見えない。静まり返った山間に不似合いな曲がながれている。さすがに金精峠や白根の頂上に向かってはどっしりと雪が覆っていて2000メートル級の山容は冬山の威厳を見せている。

 ◆そう言えば、30年も前になるだろうか、峠を越えた菅沼でキャンプをしたことがある。400名の大所帯で、お盆過ぎのもう夏休みも終盤を迎えるころだったように記憶している。引率の仲間も熱気溢れる連中で、普段から何をするにも、楽しいことこの上なかった。菅沼は私が、尾瀬や清津峡の帰りに利用しており、一度はここでキャンプをさせてみたいと思っていた。

 ◆運の悪いことに、台風が接近中と言う予報の中の出発となった。まあ、直撃はないだろう、多少の雨はプログラムを変更して展開しようと話し合い、一団、嬉々として菅沼に向かった。台風が来るなんて嘘じゃないかといえるほどの天気に恵まれ、二日目の白根山登山も無事終了。楽しい楽しい夕餉の準備をと言うあたりから天気が急変した。大風と大雨になった。

 ◆テントに水が流れ込むようになった。急遽、仲間とショートパンツ姿で側溝を掘って歩いた。夜の移動は危険だ。なんとか凌いで朝まで持たせなきゃと言う思いで、堀まくった。朝になっても雨は止まなかった。台風本体はこれからやって来るらしい。撤退しかないなと判断し、夜明けと同時に大急ぎで荷物をまとめさせた。

 ◆バスの中で「外で話していたこと、全部聞こえていたんだよ」と笑いながら子どもが問いかけてきた。えっ、本当かい。大雨と風で聞こえないと思っていたから、内緒話を大声で交わしながらの作業だった。今でも、このときの内緒話が子どもたちの嘲笑とともに宴席をにぎやかし続けている。

 ◆この夏、菅沼のロッジに泊って、白根に登ってみたくなった。そして、湯元の温泉寺で熱湯のような風呂に挑戦してみようかな、それとも、森のホテルの露天風呂に身を沈めるかな。どうせなら、戦場ヶ原のハイキングにも出かけてみよう。さわやかな緑の風を全身に浴びながら。そうだ、あの子どもたちも誘ってみようかな。

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