春宵ボケ話
◆まごちゃんは春休みです。「温泉にちれてって」と言うおねだりに心を動かされ、七光台温泉に連れてゆきました。久しぶりの温泉です。あまりにも久しぶりなので、下の孫は、大きな風呂におどろき、後ずさりしてなかなか入ろうとしなかったそうです。まあ、孫たちは女性軍に任せ、私一人、のんびりと楽しめるのが常であります。
◆さて、かけ湯の後に、ひとまず、サウナでじっくりと汗をかくことにいたしました。ちょうど高校野球も中盤を迎え、熱戦を繰り広げていますので、観戦しながらのサウナは快適なひと時であります。10分も入ったでしょうか、次は露天風呂に向かいます。体を、湯の流れている板の上に横たえて休ませ、火照りをしずませます。冷めたところで露天に入ります。
◆いよいよ洗い場で全身洗浄にかかります。入り口のところにある洗面道具置き場から自分の器を持って程よい空間に席を確保します。さて、体から洗うかと、道具入れをのぞくと、石鹸箱、かみそり、歯磨きセットといつもは用意しないのもが目に入りました。「何と、気が利くことよ」。まずはボディソープを存分に注いで、隅から隅まで念入りに洗います。
◆次は、石鹸箱から石鹸を出して「いや、やけに汚い石鹸だな」と十分に洗ってから使おうと石鹸の表面を十二分に洗い流し、顔を洗います。いよいよ、頭髪です。「うっ、シャンプーとリンスがない。家を出る時は、確かに入れたのに。さては、相方が持っていってしまったのか」と、備え付けのシャンプーに手を伸ばした瞬間、脳天を電撃が走った。
◆これは、俺の道具入れではない。人様のである。なんという。隅から隅まで洗い清めた道具一式がひと様のものだったとは。あわてた。急いで道具置き場に返しに。そして自分の物を持って、そそくさと定位置に。これだ、これが俺の道具だ。シャンプー・リンスもそこそこに、上がり湯を浴びて脱衣場に。ちらっとサウナをのぞくと、持ち主らしき人、野球に夢中の様子。
◆ああ、春。ああ、歳。ああ、天然。その日、夜まで、笑いころげて過ごしたのです。ごめんなさい。すみませんでした。
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